教育さんが聴いたオバマ大統領2014年一般教書演説

やっぱり、この人、スピーチうまい、。先生になったら、きっといい先生になっただろうなと思う。話が巧いだけじゃなくて、そこで取り上げている個々の話題に関連する人を、その場に招待していて、その固有名詞を丁寧にあげながら語るってところがね。

それにしても、こういう感想持てるのも、インターネット時代のおかげ。いまや、アメリカの大統領の一般教書演説も、ライブでもオンデマンドでもすぐに視聴できて、トランスクリプトまで即座に利用できる。英語が嫌じゃない方は、このブログ記事読まれるより、それを御視聴、御一読頂く方がいい。

Text and Video of Obama’s State of the Union Address(NYT)
Text and Video of Obama’s State of the Union Address - The New York Times

なにせ、以下は、少々すでに酒が入っているのに、自分のメモ代わりに、この演説の教育政策関連部分の意味だけを簡単に書き留めておこうとするだけなので。間違って解釈しているところが分かった場合には、後日訂正します。まあ、それでもこういう旬のものは、後回しにするよりましってことで。

ところで、the State of the Union Address をいつから、誰が「一般教書演説」と訳すようになったのか、調べようと思ってまだそのまま。どなたか教えてください。明治以来の、かなり古い歴史があるような気もするけど。

今回、オバマ大統領は、アメリカという国の状況を振り返って、そこで今頑張っている人たちの例から演説を始めて、その一番手に、子どものために残業してる先生たちのことをとりあげてたけど、the State of the Union って、たんに、そういう国全体の状況くらいの意味だし。

さてさて、すぐ終わるけど、本題。

オバマ政権のこれまでに鑑みれば、教育に関して、目新しい政策の方向性が提起されているようには見えなかった。全ては、現政権発足以来目指されてきた方向性を、さらに前進させるという意味合いの提言になっているという印象。中には、なお、実現が難しそうなこともある。ここで示された論点は、たぶん、主に4つ。

第1に、RTT(Race to the Top:頂点への競争)政策をさらに発展させ(おそらくCommon Core Standardに示されているような)問題解決能力型の思考に重点を置いたテスト体制を強化すること、第2に、質の高い就学前教育、幼児教育を広範囲に普及させること、第3に、学校における高速インターネット回線利用の普及を推進すること、第4に、若者を雇用・職へと導けるように、中等教育と大学・企業の連携協力や大学改革、奨学金制度の充実などを図ること、これらである。

以下では、第1と第2の点のみ、若干の注釈を加えておきたい。

第1の点に関しては、5年前にRTT政策を始めてから、それまでよりも、大学を卒業できる若者が増えた(ドヤっ みたいな自慢話のあと、全米で新たな経済社会に見合う能力を身につけさせられえるような教育に大きな進展が見られつつある、と、これまたドヤ顔スピーチが続く。

ただ、ここで注目すべきなのは、その新たな経済社会に必要な能力として、理系科目(科学=理科、技術、数学)重視とともに、問題解決能力、批判的思考を明示的に含めている点。「いかにうまくテストで空所補充問題を埋められるかではなく、いかによい思考ができるかを測定する新たな方法を支援する」ことの重要性が強調されている。理系重視という点は、とりあえず措くとして、後者の問題解決能力・批判的思考重視の方向性は、教育さんにはおなじみの、いわゆる活用型学力、PISA型学力(日本で言えば、全国学力状況調査B問題的な学力)の育成に力点を置くことを意味するとともに、それを「測定」するという言葉が、演説に用いられていたことから推察されるように、そうした学力を評価するための標準化されたテストの実施を推進強化することを示唆している。そして、こうした目標は、アメリカ合衆国にこれまでなかった連邦レベルでのカリキュラム基準(ナショナル・スタンダード)であるCommon Core Standardとその適用のされ方に具現化されようとしている。

日本が、今後真似しようとする可能性があるとすれば、これかも。これは部分的には、ある意味で、先進諸国の国際的トレンドなのかもしれないけど、テスト体制強化で、学校レベルの平均点公表して、競争というのはやめた方がいいんだけどな。NSC日本版みたく、RTT日本版とかなったら、と思うとぞっとする。

第2の点に関して言えば、「研究の示すところによると(Research shows that…)」という表現に見られるように、学問的成果を踏まえて、幼児教育に投資することの意義を唱えていることが分かる。このあたり、一国のリーダーが一つの政策を主張する上で、その分野の学問的成果(教育学、社会学、経済学、心理学等)を十分に参照して政策提言が行われていることを意味すると思う。うちらの国はどうでしょう?

ただ、前の一般教書演説でも主張されたこの幼児教育への公的予算投入という案の実現は低そうに見える。学問的研究の示唆するところとは異なり、就学全教育や幼児教育に公的資金を費やすことや、それを国策とすることに同意するような世論が形成されるのは、難しいからだ。もしかすると、アメリカでは、国民皆保険制度以上にウケないかも。

以上のようなごく簡単なメモ書きにも、いろんな誤解が含まれているかもしれない。問題をご指摘頂けると有り難いっす。