『デモクラティック・スクール』第2版から その1


 いつもながら、また久々のブログ更新。今回は、シカゴのある小学校における教育実践事例の紹介(翻訳草稿)。出典は以下。

Schultz, B.D. (2007). Feelin' what they feelin': Democracy and curriculum in Cabrini Green. In M.W. Apple & J. A. Beane, (Eds.). Democratic Schools (2nd ed.). Portsmouth, NH: Heinemann.

 実は、このアップル及びビーン編著『デモクラティック スクール』の初版(1995年)を自分が翻訳して、1996年に出版していた(既に絶版品切)が、2007年に上梓された第2版は、かなりの改訂が加えられて、新しい章も付け加えられた。その新たな章が上記の論考である。この章以外は、初版と同じ事例(カリキュラムと教育方法)が紹介されているのだが、改訂翻訳のために読み直してみて、そこで紹介されている実践は、幸か不幸か、いまだに古びていない。
 このように、各章に改訂が加えられたこと、新たな章が加わったこと、そして、何よりも、その実践事例はいまだに参照するに値するものであること、さらに、初版の訳は「若気の至り」に過ぎることf^^;;といった理由から、第2版の翻訳出版を考えている。今回の更新は、その改訂翻訳草稿の一部(といってもまるごと一章分)のお披露目。というわけで、相当長文のブログ記事になる。なお、十分に推敲でいていないので、まだミスがあるかもしれない。
 さて、このシュルツ氏の章に簡単にイントロを付けておこう。シュルツ氏は、1974年生まれ。小学校教員として3年間務めたあと、イリノイ大学シカゴ校で教育学の博士号をとった。現在はノースウエスタン大学の准教授。ここに紹介する文章は、彼が、シカゴで教員をしていた時の実践記録である。
 アメリカ合衆国の教育と日本の教育で大きく違う点の一つは、地域によって、学校が抱える諸条件が大きく異なるという点だ。学校によっては、日本では考えられない悲惨な状況に置かれている場合がある。シュルツ氏が務めたシカゴ市内のカブリニ・グリーンという学校も、お読み頂くとわかるように、そのような悪条件に見舞われた学校だった。容易に想像がつくように、そういう地域の子どもたちは学習意欲が低い子どもの割合が高く、この学校もいわゆる困難校だった。
 シュルツ氏は、そこで、自分たちがおかれているその状況をどうすればいいのかという問題の解決を授業の柱に据え、その問題解決に向けて、子ども自身が自立的、主体的に考え、行動することを支援するという方法を採用したのである。ある立場からは、おそらく、こんなのは「授業」ではない、とか、こんなので「学力」が身に付くのか、と訝しむような声も聞こえてきそうである。しかし、本当にそうだろうか?
 とまれ、こうした実践の意義として考えられる諸点について詳細を取り上げることは、別の機会に譲ることにして、ここでは控えよう。まずは、翻訳ながら、その実践記録そのものをお読みいただくことが一番だろうから。もとになった原文も、以下からダウンロードすることができる。

英文ダウンロード(若干異同あり)

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