個別化・個性化教育(3):全国個性化教育連盟春季研究会

minor-pop2008-03-30

 昨日3月29日上智大学で開かれた全国個性化教育連盟(4月から日本個性化教育学会)の春季研究会に出席し、3月28日に告示された学習指導要領(幼稚園、小学校、中学校)に関する解説、及び、「習得・活用・探究」(特に「活用」やPISA型学力)という観点から見た実践報告を聴いた。学習指導要領に関しては、「習得・活用・探究」という枠組の問題点に関して批判的な議論が展開され*1、一方で、この新指導要領で新たに独立章として扱われ、その地歩が確固たるものとなった総合学習について、その各条文の意味が明快に解説された。
 新学習指導要領と学力テストの実施によって、アメリカ合衆国でNCLB法施行から生じた事態のごとく、日本でもteach to test(テストのための教育)が跳梁跋扈することのないように、子どもの学びに関する議論をさらに深めて行く必要があると感じた。
 この研究会の後、事務局会議と懇親会が開かれたが、上の研究会で実践報告をされた先生からいろいろな示唆に富む話を聞くことができた。とりわけ、進歩主義的な教育を進めて行く際には、教員がチームを組むことが不可欠だが、そのチームづくりの工夫はほとんど明示的に語られたり、書かれたりすることがない。管理職との関係、先輩、同輩、後輩との関係などがどんなふうに築かれていくのかという点は、その実践の成否と継続性を左右するだけに、そういう教員集団づくり(教員集団運営)に関して、ある程度筋道立った説明が具体的事例に基づいて、もっと語られてよいだろう。
 以前、この日記でも少し触れたが、その際のキーは、「個性化個別化教育に関する現職研修も個性化個別化教育的に」(要するに、個性化個別化教育的現職教育を)ということになるだろうか。
 上の写真は全く別もの(著作権フリー画像)だが、上智大学近くの土手の桜は満開で、それはそれは見事だった。
 そして、今日3月30日、新宿文化センターでピナ・バウシュ ヴッパタール舞踏団の公演「フルムーン」を鑑賞した。圧倒的。その話は、また明日。


*1:中教審の『審議のまとめ』から明らかなように、習得は基礎基本に、活用は思考力・判断力・表現力に対応し、探究は総合学習でという基本的な枠組があるようだ。そして、この枠組の正当性を前提とし、整合性を論証する向きも当然見られるわけだが、この枠組に関しては、その解釈によって実践面に少なからず影響を及ぼす可能性があるので、この枠組に問題があるならあるで、その問題の所在を丁寧に明確化する必要がありそうだ。実際、平成10年改訂版を受けて、旧文部省によって示された過去の解説(『初等教育資料』(H12.7))では、思考力も表現力も基礎基本に含めて考えるべきだ、という趣旨のことが明記されているのだから。
 もし、今回の新指導要領で「活用」が、基礎基本の活用、を意味するとすれば、メビウスの輪のように奇妙な論理が生じてしまうことになる。もちろん、我々としては、習得・活用・探究という実体論的とも言える知識概念や段階論を採用しないわけだけれども、文科省の説明に矛盾がないのかどうか、また、実体論ではなく関係論的な視点から見た場合には、この習得・活用・探究がどのような論理で批判できるのかを明らかにする必要がある。