二教科同時進行単元内自由進度学習

 これは、個別化・個性化教育の方法論の一つで、一斉授業方式のように、教師が子どもに板書・資料提示や発問によって教えるということを中心に授業を組み立てるのではなく、教師(多くの場合、複数の教員がタッグとかチームを組んで)が準備した多種多様な学習材から成る学習環境を活用して、教員からの介入は最小限に留め、子どもたち自身が主体的・自律的に学習を進めて行くことを中心に授業を構成する方法論である。
 たとえば、国語のある単元と、理科のある単元に関して、それぞれ、複数のコースを設定し、基本的に子どもが自由に好きなコースを選べるようにして、子どもは、自分が選んだコースのために準備された教材(学習カードその他)を用いて、個別に(それぞれが自立的に)学習を進める。その際、当該二教科のどちらにどれだけの時間をかけるかということも、最低限必ず習得しなければならない事項をクリアすることができる限り、個々の子どもが、ある程度自由に決めてよいことになっている(むろん、必要に応じて、教師からの助言や働きかけはあるわけだが)。
 標準時数10時間の国語の単元と同じく10時間の理科の単元を同時進行する際には、二教科合わせて20時間の計算になるが、国語が得意で必須事項の習得には(場合によっては、発展的な学習内容のクリアでさえ)7時間で充分だが、理科は実験などを多めに試みて、じっくり考えたいという子どもは、理科に13時間を割り当てる学習計画表を作ることも考えられる。
 それぞれの教科に設けられる選択コースに関して言えば、どちらの教科も、複数のコースのうちのひとつは、教科書の学習の流れに沿った過程を、様々な資料や、用意されたヒントカードや学習プリントなどの利用により個別に進めて行くものと、もうひとつは、教科書よりも、活動やものづくり、観察・実験などを多く取り入れたコースなど、教科書の流れとはかなり異なる仕掛けを施したコースが用意されることが多い。
 どの子どもも最低限押さえなければならないポイントについては、そのポイントが習得されているかどうかを確認するためのチェックテストが適宜設けられており、子どもたちは、そのチェックテストさえクリアできれば、それを超える水準の、発展的で、より自由度が高く、創造的な学習に進めるようになっている。逆に、チェックテストだけは、必ずどの子どもも全員終えなければならず、それが終えられなければ、そうした学習には進めない。

 いずれにせよ、教師が黒板を背に、子どもの集団に向かって一斉に説明・指導するのは、単元の最初の時間にコース説明ガイダンスをするときと、最後のまとめの時間のみで、その間は、教師との間で契約を交わした各自の計画表に沿って、それぞれの子どもが各自で学習を進めて行くことになり、教師が子どもに助言・指導することがあるとしても、それは一連の学習過程におけるチェックポイントでの確認を含めて、必要に応じて個別に行うだけである。。
 むろん、学校により、その過程で、子ども同士の教えあいや相談を、必須事項の習得に支障がない限りで認めているので、子ども同士の交流がないわけではない。子どもの学習進度に時差が生じることになるが、その差が、互いの学び合いを産む契機となるのだ。

 「個に応じた教育」の重要性という点は、中教審の答申でも、学習指導要領でも繰り返されている。が、じゃあ、どうやって?という方法論が、現場で具体的に明確化されることが少なく、ただ個々の子どもをよく見て指導するという「意気込み」「思い」だけが語られて終わり、あるいは、よくても特定の名物教員の名人芸に近い取組が紹介され、あの人はすごい、みんな少しでも見習わないと、と思っても、結局、自分にはなかなか、ということになりがちだ。
 週プロは、そのどちらでもない、応用可能な方法論としてデザインされ、彫琢されて来たものである。これだけでは、なかなかイメージするのは難しく、興味も持ってもらえないものなのかもしれない。関心のある方は、全国個性化教育連盟(もうすぐ全国個性化教育学会になる?)で、これに関する非常に優れた実践モノグラフ(ブックレット赤本シリーズ第5号)が刊行されているので是非参照されたい。

 で、なぜ週プロなのか、を書く予定だったが、長くなったので、それはまた明日以降に。